ディテール:ペーパーウッド
滝沢ベニヤの「ペーパーウッド」シリーズを検討した話はここに書いた.今回は実際の様子などを紹介したい.
ペーパーウッドの実際
二階リビング部分
採用箇所
気に入ったからといってあんまり沢山採用しすぎると「ペーパーウッドの家」みたいになってしまうので,そこは慎重に採用箇所を選んだ.
問題点など
木目には程よい荒さがあり,通常のプライウッドよりは少し存在感のある建材といえるかもしれない.問題点があるとすれば,規格だ.最大で1800mmのサイズ展開しかないので,例えば一面の端から端まで机にするとか,壁の全面に本棚を作りつけるなどといった場合に,長さが足りなくなるので継ぎ目ができてしまう.通常のベニヤなどであれば,2400mmとか3000mmなんていう材が手に入るので,継ぎ目が気になる場合はペーパーウッドの採用を諦めたほうがいいかもしれない.
二階ワークスペース部分
ディテール:コルクフローリング
ロビンソンコルク
色合いは「ミディアム」でちょうど良い感じ
フローリングはほとんどコルクにした*1.ポルトガルのロビンソン社の製品だ.同社は150年以上コルク製品をつくってきたらしい.RB2-M7Wというモデルだ.ミディアムカラーで7mm厚の床暖房対応モデル.
味わいのある良い箱に入っている
サンプルの様子
実際どうなの
コルクタイルを採用するまでの経緯はここに書いたとおりだ.実際,かなり悩んだ.みんな,悩みますよね?フローリング.
さて,実際の使い心地だ.
- 普通の値段*2
- 若干の防音性がある
- 若干の断熱性がある
- しかし床暖房にはしっかり対応*3
- 比較的やわらかい
- だが丈夫,見た目より丈夫,かなり丈夫*4
- 汚れはかなり付きにくい*5
- 肌触りもよい*6
- 掃除もらく*7
2016.10.11追記 欠点らしきものがあるとすれば…… - 靴下で滑りやすい*8
- 日焼けで色が薄くなる*9
丈夫な畳
乱暴なたとえだがコルクフローリングは畳に似ている.涼しくて暖かくて柔らかく肌触りが良い.ただしロビンソンのコルクは畳よりははるかに丈夫だ.Giroflexの83ブラサ*10というゴツめの椅子をスタジオで使っているのだが,キャスターつきの脚でかなりゴリゴリやっても大丈夫そうだ.正直これほど丈夫とは思っていなかった.
Giroflexに乗ってコロコロ移動しても大丈夫そうな感じ
丈夫,大丈夫
聞くところによると,コルクの床材はヨーロッパのホテルなどでも使われることもあるという.靴やヒールで踏んでも大丈夫なのだから,日本人が裸足でくらすぶんにはまったく問題ないだろう.さらに,湿気にも強いらしい.もともとがワインの栓に出来るくらい水分を通さないわけだしね.キッチンや浴室などに使う例もあるという.
千代田商会のサイトに行くと,いろいろな建築家がコルクタイルについてコメントしてるページが見つかる.難波和彦さんが「総合的な性能ではコルクタイルが傑出」「小さな子供がいる住宅にはもっとも適した床材ではないか」と書いているが,半年使ってみた実感として賛成できる.さらに彼は「15年以上経過した現在でも大丈夫」と書いているので,きっと大丈夫なのだろう.
天然素材と人工物の折衷案的な存在
ジョイントタイプのコルクマットとの比較
そういえば我が家では旧居でもコルクマットを使っていた.ギザギザでつなげて既存のフローリングなどの上に広げるタイプで,子供部屋に敷き詰めていた.オイルやウレタンの仕上げをしていないタイプだった.
暖かいしクッション性もあるのでわりと気に入って三年ほど使ったが,特にひどく汚れたり破れたりすることは無かった.ただし,さすがに全体にどことなくくたびれて,うっすらとした黒ずみが出てきた.
このタイプのコルクマットと比べると,ロビンソンコルクは
というわけで,同じコルクとはいえだいぶ使い心地は違うようだ.
*1:ダイニング,キッチン,子供部屋,スタジオがコルク.玄関,リビング,寝室は違う材にしたがその件はまた後ほど
*2:平米あたり1万円前後.マルホンの後に見るとなんでも安く思える.IOCの後に見るとやや高級床材に思える
*3:非対応のモデルもある
*4:椅子の脚の跡が一時的にへこみになったりもするがしばらく放っておくと戻っている.硬いおもちゃなどをぶつけてもかなり傷になりにくい
*5:何をこぼしても拭けば大丈夫な感じ
*6:吸水性・吸湿性はほとんどないが,べたつくことも無い
*7:掃除機でもいいが,拭き掃除が合いそうなのでブラーバが気になる今日この頃
*8:素足やスリッパでは問題なし
*9:我が家は気にしないレベル
*10:中古で6万くらいなのでお勧め
*11:つめで押すと一時的にへこむくらいのやわらかさはある.コルクマットははさみでも切れるが,ロビンソンコルクはほぼムリ
*12:オイル仕上げということもあるが,もともとコルクの質が違うようだ.粘土を乾かしたものがジョイントコルクマットだとすると,それを焼き固めたのがロビンソンコルクといったような感じ
調光とLEDの色温度の話
LEDダウンライト
我が家の照明プランは比較的シンプルだ.基本的には,天井埋め込みのLEDダウンライトで構成されている.
LEDを採用しなかった場所
キッチンとダイニングに限っては,LEDの採用を見送った.理由は二つある.
LED調光ちらつき問題
一つには調光機器の対応問題だ.最近LEDもコンシューマーレベルで調光できる製品が出始めたが,実は動作が不安定だ.相性などによってちらつきなどが出るといわれている.他の部屋であれば,最悪だめなら調光せずにフル発光で使えばよいが,ダイニングはシーンに合わせてやはり調光が欲しい.使いたい調光機器*1とLEDユニット*2の相性が確認できなかったので,安全のためLEDは避けてハロゲンの従来品を採用することにした.
調光コントローラーはLutron GRAFIK Eye 3000
LED色温度問題
もうひとつは光のスペクトル分布の問題だ.簡単に言うと,LEDは色がおかしい.同じものを見ていても色温度が違うため,違った色に見える.太陽光,白熱球光源は幅広く滑らかなスペクトル分布を持っているため色温度に違いはあってもそれぞれにナチュラルに見える.蛍光灯は見慣れていることもあってか,その違いはそこまで気にならないことも多い.けれども,LEDはものによってぬぐえない違和感が出るものがあるのが現状だ.
ダイニング照明の実際
スペクトルが幅の広い綺麗な一峰性の形ではなく,いびつに尖った二峰性だったりするとどうも違和感が出ることが多いような気がする.オーデリックのショールームでも確認したところでは,おおむね色のずれがひどく気になるものはなかったが,大丈夫という確信も持てなかった.とくに食事のときに色が気になるのはいやなので,やはりダイニングとキッチンに限ってはLEDはやめてハロゲンにすることにした.おかげでダイニングに関しては色もちらつきも気にならずにすんでいる.
ハロゲンを使っているダイニングの照明.現状ではペンダントライトの採用は見送ったけれども,ライトレールを付けておいたのであとでつるすのは簡単だ
LED色温度の実際
一方,その他のLEDの色はどうかというと実際これは気にすれば多少気になるといったところ.気にならない人も多いかもしれない.我が家のLEDはすべて電球色なのだが,その光で部屋の写真を撮ってみても,通常の白熱灯のケルビンプロファイルの補正ではまったくニュートラルホワイトバランスにならない.スペクトル分布がことなっているのは明らかだ.そして実際に肉眼でも若干気になる.
LED調光ちらつきの実際
調光に関しても,他の部屋では実際にちらつきが出た*3.寝室とリビングの調光を暗くすると,冬場は明らかにちらついていた.100%点灯時は問題ない.なぜかよくわからないが暖かくなってから再現性がなくなったので,とりあえず今年の冬までは様子見の予定だ.
おまけ
我が家が採用を見送った照明機器の一部を載せておきます.
続きを読むイケア・ハッキングその2:PAXのパーツをビルトインクローゼットに組み込む
イケア・ハッキングその1はこちら.
ハイブリッド・クローゼット
ビルトインクローゼットは高価だ.そこでフレーム部分だけを廉価な建材で造作ビルトインにして,パーツはイケアのPAXシリーズのものを流用することを考えた.
フレーム部分はシナ合板で大工工事とした.フレームも含めてPAX全体をビルトイン「風」にするよりは収まりが綺麗だ.さらにフレームが直接壁に固定されているので,地震などでも倒れない.
高さ方向は自由なので,一方は天井までのフルハイト,もう一方はあえて空間をあけた.おかげで,ベッドから見た時に「ヌケ」があり圧迫感が少ない.
その「ヌケ」の部分に間接照明が入っている.LEDの間接照明用ラインライトは現状の技術では調光できない!ここは従来式にしてでも調光対応にしたら良かった.
現地調査
ダボ穴のピッチや直径は,あらかじめイケアに偵察に行って測定した数字にしたがってあらかじめ開けてある.後ほど補足で具体的な数字も載せておくが,イケアはときどき規格を変えることがあるので,この記事を参考にされる方は必ずそのときに売っている現物を確認してサイズをご自信で測ることをお勧めする.
さらにいうと,こういった規格ものとの兼ね合いはときにシビアなので,普通は工務店が嫌がってやってくれない.実際に我が家でも,一部PAXパーツに対して造作フレームの幅が1-2mmほど足りず入らないところがあった.適宜パーツを削って対応した.
できあがり
反対から見たところ.以前から使っていた鏡をとりあえず置いてみた
ガラスがはめ込まれたトップが売っている.開けなくても中が見えるし,棚の上部にに置いた忘れられがちなものも下から透けて見えるので便利だ.左右のマルチフックはベアリング入りの稼動システムが組み込まれていて引き出せる.PAXのパーツは値段の割に結構しっかり作ってあるものが多い.
ハンガーパイプやズボンハンガーも引き出せる
俯瞰図
おまけ
施工時の寸法メモを発見したので転載しておく.
続きを読むディテール:風呂のタイル~サブウェイとひだ-sの比較
風呂のタイルをサブウェイにするかどうかで悩んでいたことはすでに書いた.タイル選びは家作りにおいて悩みどころなのではないだろうか.
家具は造作できるが,タイルをオリジナルで作ったという事例は,あるかもしれないが聞いたことがない.そんななかでサブウェイセラミクスのタイルはかなり好きなタイプだったけれども,これがまた結構高い.どうせ使うなら風呂じゅう全面に配置したかったので減額調整で考え直すことにした.結果,名古屋モザイクのhida-sを採用した.
アップで見た風呂のタイル.目地は2.5mm.当初は4-5mmはないとズレると脅されたが,職人さんに頼み込んで狭くしてもらった.
hida-sはサブウェイとかなり似ているが,両者を比べると縦横比の若干の違い以外にもいくつか相違点がある.hida-sのほうが寸法が整っていて,フチがわずかに盛り上がっている.さらに,hida-sは水周りの使用に対応したモデルだ.サブウェイは釉薬の割れや色むらなどあり,より風合いがある.
サブウェイのタイル
実際に普通のタイルでも水回りの使用には問題がないが,寒冷地などではタイルの内部に残存した水分が凍結することで破損などの可能性があるらしい.関東地方の風呂場に使う分には,水回り非対応のラインナップで実は問題ないらしいということもあとで知った.
タイル目地の色はライトグレーにした.当初は黒目地にしようと思っていたが,家全体の色のバランスを考えて変更した.このくらい明るいと赤カビが出たときに目立つ.ダークグレーでも良かったかもしれない.まあすぐに気がつくから良いとも言えるし,面倒で掃除を怠った場合いつまでも気になるという欠点とも言える.
おまけ
検討した各種タイルなどの様子.左上はキッチンのサイルストーン(セメント).左下はリネアタラーラのキッチン壁面の塗装サンプル.