透明な家具と地鎮祭
話は突然さかのぼるが,今日は地鎮祭の話の続きをしよう.
地鎮祭の記事はすでに書いた(上記).そこでは触れなかったことについて書いてみることにする.
僕は音楽が好きなので,自分の家を立てる際にもそういった流儀でやりたいと思っていた.通常の地鎮祭は神主を呼んだりすることが多いが,我が家の場合はミュージシャンにお願いした.
大学時代からの古い友人である織原良次君というフレットレスベース奏者がいる.今をときめく引っ張りだこのプレイヤーだ.数多くのレコーディングにも参加しているし,ときどきテレビでも歌手の後ろのほうに写っていたりするのを見かける.
そんな彼は,自分のプロジェクトのひとつとして「透明な家具」というインスタレーションをやっている.フレットレスベース一本とループサンプラーだけで音像を作り出しアンビエントの手法で空間を満たす試みだ.結婚式やライブでの舞台転換などいろいろな使い道があるという.
四谷綜合藝術茶房 喫茶茶会記にて (c)mashow
「無形のインテリア」と彼自身が呼ぶその世界のありかたは,極めて周辺的でマージナルなものだ―――「聴かせようとする演奏者-聴こうとする聴衆」という二項対立を前提とする古典的音楽ではないが,少なくとも無音以上の何かではある,という意味において.
我が家のオープンハウスを兼ねた忘年会でも透明な家具を実装してもらった.パフォーマンスが終わって音がふと消えた瞬間に,みなが会話を止めてはっとした.話をしていると気がつかないような存在感で忍び寄るその音は,実はかなりの音量で鳴っていた.そのことに,音が消えてから初めて気がついたかのような表情が印象に残っている.
話がだいぶ前後したが,そんなわけで我が家の地鎮祭には織原君を呼んで透明な家具をやってもらったのだった.
「透明な家具」の音が土地に満ちるなか,湯を沸かし豆を挽いてコーヒーを淹れて土地に撒いた.
(c) id:bad
音符と木と家をかたどったクッキーを妻が焼いてくれたので,これも四隅に撒いた.
(c) id:bad
家具がないどころか,壁も屋根も無い状態なので,透明な家具というかむしろこれは透明な家みたいなものだ.それはさておき,織原君の作り出す空間は我が家の地鎮祭にぴったりの舞台装置になった.音が土地に満ちてゆくさまを味わっていると,私の頭の中にも「これは良い家が建つな」という思いが自然と満ちていった.
今月も四谷で開催されるようだ.自分も行けると思うので,興味のある方はぜひ会場でお会いしましょう.
○7月31日(金)深夜
BGA『透明な家具』
@四谷綜合藝術茶房喫茶茶会記
深夜廟vol.19
▷開演25時/終演28時
▷チャージ2000円(1d付)
▷詳細
http://t.co/gvdYVWb725
※今月も無事開催します。 pic.twitter.com/li0GDYVoQ6
— 織原良次 ryoji orihara (@orihararyoji) July 27, 2015